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エネルギーマネジメント技術の可能性を確信してスピンアウト

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2017年9月5日

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インフォメティス株式会社 代表取締役 只野太郎氏

1991年に東京都立大学電気工学科を卒業後、ソニー入社。映像システム商品の開発、事業企画や海外マーケティングなどに従事。2010年からは、同社R&D部門ホームエネルギーネットワーク事業開発責任者を務めた。2013年4月にインフォメティスを創業、代表取締役に就任

インフォメティス株式会社について

会社名

インフォメティス株式会社

設立年月

2013年4月

事業内容

電力データ分析による家庭IoTソリューション提供

(沿革)

ソニー株式会社にて

1999年

ソニー株式会社にて世界初の人工知能搭載ペットロボットAIBOを開発・商用化

2009年

エネルギー分野研究開発

2010年

人工知能技術から家電分離技術が派生

2011年

米スマートグリッド実証
Pecan Street Projectに参画

当社設立以降

2013年

ソニー株式会社より家電分離技術を譲渡され独立、インフォメティス株式会社設立

2015年

東京電力と新規サービスの共同実証
英ケンブリッジにR&Dセンター設立

家電ごとの稼働データを提供し便利で安心な暮らしを創造

 インフォメティスが提供する機器分離推定サービスでは、各電気機器ごとの稼働情報を把握できます。これまで全体の消費電力しか把握できなかったものが、パソコンで何ワット、テレビで何ワットと個別にわかるようになるのです。
 この機器分離推定技術によって得られる「家電単位の稼働データ」は、単なる電力消費情報などではありません。弊社が提供する、世界最先端のAI技術を活用したデータマイニング技術「Metis App Engine」で分析することによって、家庭の生活パターンを明らかにし、より便利で安心な暮らしを提供するためのビッグデータになり得るのです。
 たとえば、2016年10月に発表した、インフォメティスと東京電力エナジーパートナー様との業務提携では、家電分離推定技術を活用した高齢者の見守りサービスを実現しています。
 具体的には、洗濯や調理といった細かな家電使用の状況を把握することで、離れた場所にいる家族でも、高齢者の暮らしぶりをゆるやかに見守ることができます。専用ウェブアプリを通して、見守り側と見守られ側がコミュニケーションをとることも可能です。
 また、丸紅様とは、インフォメティスが開発した機器分離推定のための専用センサーと、Home IoT情報サービス「うちワケ」の販売契約を結ばせていただきました。太陽光発電の発電量や売電量も提供でき、ソーラー発電の「見える化」にも寄与します。
 2017年5月には、高精細な機器分離推定技術に対応した一般産業用スマートメーター「SmaMeⅡ-TypeHP」も発売しました。まずは日本で私たちの家電分離技術実績を普及させ、実績を作っていく方針です。2~3年後には海外市場への展開も視野にいれています。

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電力スマートメーターを使った具体的な事業展開とは

現在、直近で進めている事業は、
 1.見守りサービス「うちワケ」
 2.東京電力エナジーパートナー「遠くても安心プラン」
 3.東京電力パワーグリッド「IoTプラットフォーム」
の3つがあります。
 まず、ひとつ目の見守りサービス「うちワケ」ですが、こちらは弊社のスマートセンサーを分電盤に設置していただくと、ご家庭内の家電単位での稼動データが、1時間単位で外出先からスマホで見えるようになるサービスです。これは住宅設備会社様向けに提供させていただいているため、リフォーム会社様や工務店様などに販売させていただいています。

 そして、2つ目の「遠くても安心プラン」は、弊社技術を使って東京電力エナジーパートナー様が提供しているサービスです。

 このサービス開始のきっかけは、東京電力エナジーパートナー様と弊社で、2015年から1年間、300世帯に協力していただき、スマートメーターの利用実態についての実証実験を行なったことからです。各ご家庭でお使いいただくスマホアプリには、電力省エネ情報が表示してあり、例えば「昨日よりも電力使用量がこれだけ多いですよ」とか「省エネにはこういうことが良いですよ」といったアドバイスを表示させていました。
 この実証実験で分かったことは、毎日更新されるエネルギー情報はすぐに飽きるということです(笑)。これは想定内でした。自宅の電力の内訳は、最初に知った時は「ほう!」と思うわけですが、それほど毎日劇的に変わるものでもありませんから。
 ところが、この実証実験で興味深いことが分かりました。スマホアプリでは別のページで自宅の家電使用の様子がリアルタイムで分かるようにしていたんです。時間軸が上から下にあって、何時から何時まで洗濯機が動いていたとか、各家電稼動の履歴がでるような画面です。このページは多くの方が、毎日、または毎日に近い頻度で見ていただいていたんですね。
 なぜこのページがよく見られているのか。実際に使っていただいている方々にインタビューをさせていただいたところ、仕事で外にいるお父さんやお母さんは、自宅の様子が気になるわけです。例えば、共働きのご家庭では、子供が何時に帰ってきたとかを、スマホの画面から家電の使用状況で確認していただけます。
 私も会社の帰りの電車の中で「今の自宅はどんな感じかな?」とアプリを開けると、いつも通りに6時に炊飯器が動いているから、6時半ぐらいから、皆でごはんを食べているかなとか、テレビがついていれば団らんの時間かなとか、そうしたことをアプリ画面から情報を得て帰途についています。
 自宅の家電稼動はパターンがあるものの、毎日変化するコンテンツなんです。実証実験では、今日はテレビが消えている、子供が試験前だからかな?とか、家族の様子を確認するような使い方をされている方が多いようでした。
 もちろん、エネルギー会社が最適な電力供給のためのデータとしてお役立ていただけるとは思いますが、ユーザー様にとって価値が大きいのは電力データよりも、自宅の家電別使用状況を見せている画面であろうと。
 これも、見守りサービスのひとつであろうと思っています。もちろん、ご高齢の方の見守りはもちろん、ひとり暮らしの学生さんを親が見守っているかもしれませんし、いろいろな用途が考えられます。

機器分離推定技術がIoT時代の先行者メリットになる

 私が自宅の家電使用状況を外出先から見ているような使い方は、多くの方が「見守りサービス」という言葉で想像するものとは違った意味を持つと考えています。そこで、家の中の暮らしぶり、活動状況を見るような使い方を、私たちはAwareness(アウェアネス・気づき、意識)と呼んでいます。対象となるお客様は共働き世帯、ひとり暮らしの学生さん、単身赴任しているご家庭など幅広く、海外単身赴任中の方が日本の家族をカメラではなく家電の使用状況でゆるやかに意識できる。こういったマーケットが先行するのではないか、と予想しています。
 ところが、これが1~3年とかではなくて、5年先とかになると、東京電力パワーグリッド様とのインフラ事業が大きくなってくると予想しています。見守りサービスのような単一サービスを提供させていただくより、より電力供給の上流に弊社の技術が入っていくことによって、ご家庭やオフィスで、必要なサービスだけを選んで受けられる。アウェアネス系のサービスはもちろん、家電の老朽化を知らせるサービスも可能です。今、冷蔵庫を買いかえれば3年で元がとれるぐらい電力浪費していますよ、などを教えてくれるサービスなど。また、リコールが必要な家電商品の発見なども可能です。
 また、一般的に音声ユーザーインターフェース、またはホームアシスタントボットと言われているものとの連携も考えられると思います。こうした機能の普及と一緒に家の中の世界を作っていけたらいいなと思っています。
 世の中の家電すべてがネットワークにつながって、センサーネットワークが織りなす世界が来ると言われてはいます。…とは言っても、大型家電については10年以上も買い換えがないわけですから、ネットワークにつながった家電が普及するのに何年かかるのでしょうか。ところが、私たちの会社の技術では10年前の炊飯器であっても判定可能ですから、今からの10年ということで考えると先行して家庭内の家電使用状況のデータからいろいろなサービスや価値を作っていける位置にある会社だと考えています。
 将来、IoT時代になったとしても、先に価値を創造して、IoTのデータに置き換えることで、さらによいサービスを作っていけると考えています。

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家電分離技術の可能性を確信してソニーから独立起業

 私は、元々は1991年に電気系のエンジニアとしてソニーに入社し、技術畑でずっと仕事をしてきました。しかし、30歳をすぎてからは、ビジネスに関心がでてきたため、ビジネススクールに通いはじめ、部署も事業企画へ移りました。
 2010年頃のソニーでは、次世代領域として健康医療や、環境エネルギーなどの分野で、ソニーの情報技術を活用したビジネス創造に注力しており、私は自ら立候補してエネルギー分野における新規事業部隊のリーダーに就任しました。
 実は私自身、エネルギーは全くの素人でしたが、情報技術のプロという門外漢が、全く素人の目で環境エネルギーを見つめた先に、何が生まれるのかというのがソニーの考えでした。すごく面白いR&Dの突破だと思いましたね。
 ただ、その後、2012年頃になると、ソニーの経営環境は非常に厳しくなっていきます。オーディオ、ビジュアル、ゲーム、映像、カメラといった分野に集中せざるをえなくなったのです。
 当然ながら、新しい技術の種をぶつけ、営業部隊や事業開発部隊をゼロから育てて顧客を作るという新規事業領域に投資を続ける余裕はもはやありませんでした。「このままでは機器分離技術はお蔵入りになってしまう」という危機感がありました。
 事業を2年ほど続けていた私は、機器分離技術が、世の中に新たな価値貢献ができる技術だという確信を持っていました。さらに、深刻化する地球環境問題のソリューションとしても、エネルギーマネジメントシステムが絶対的に必要だという想いもあったため、この事業を創っていく覚悟はすでに出来上がっていました。
 ソニー幹部に相談したところ、「外部のエネルギーのプロの人たちが、本当に事業価値があると判断するのであればやらせる」と言われました。そこで、ソニーからの独立を目指して、いろいろ外を回り始めました。
 そのときにご縁があってお会いして、私の考えを最も理解してくださり、私たちのやりたいことをできる限り実現しようと動いてくださったのが、ジャフコでした。

ジャフコの担当者とは「家族よりも一緒にいる」

 ジャフコとは、事業計画の段階から、二人三脚でやってきたという意識があります。
 企業経営では、将来的な調達戦略や拡大戦略も含め、事業とお金が常に両輪で回っていきます。一度投資を受けたファンドとは長いお付き合いになるため、最終的には、信頼できて、パートナーとして長いお付き合いができるかどうかが重要です。
 私たちの場合でも、最初からジャフコから投資を受けると決まっていたわけではなく、複数の選択肢がありました。しかし、最終的に決め手になったのは「人を信じられるか」というところでした。
 そして、我々のやりたいことを一番理解してくださっている、ジャフコであれば間違いはないだろうと判断しました。ジャフコからは投資を受けるだけでなく役員としても参画していただいています。
 ジャフコの方には、経営メンバーで話し合うときは、ほぼ常に同席していただいています。元エンジニアが大半を占める私たちの会社には、事業経験がある人材がほとんどいません。ジャフコの経験を活かしたアドバイスは、大きな支えになっています。それ以外の商品や企画といった分野についても、経営メンバーとともに円卓を囲んで、ディスカッションに参加してもらっています。「家族よりも一緒にいる時間が長いね」なんて話していたこともありました(笑)。
 私も含め、大企業のそれも研究所などで働いていた人材が多いため、立ち上げ期には、社員一人のマインドセットや、事業体としての機能を、ベンチャー起業として最適化するのに苦労したりもしましたが、ようやくサービスインにこぎつけました。
 これから起業する方には、「迷ったら人を選びましょう」とアドバイスしたいですね。どの人と仕事をしたいかを基準に、「人」で選べば間違いないと思います。

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