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時代に合わせて変化し続ける強さ。「10億円×100事業」を目指す商社の新たなスタート
時代に合わせて変化し続ける強さ。「10億円×100事業」を目指す商社の新たなスタート

様々な課題を乗り越えてきた経営者達に、経営者として大切にしている志や、事業を通じて実現したい想いを聞く「経営者の志」。
1回は、株式会社フジテックス 代表取締役社長の一森雄介氏、代表取締役副社長の塩塚敬氏に登場いただき、
投資担当者の水谷太志小池真矢からの視点と共に、これからの事業の挑戦について話を伺いました。

【プロフィール】
株式会社フジテックス 代表取締役社長 一森 雄介(いちもり・ゆうすけ)
関西大学卒業。2003年に富士テック(現フジテックス)へ新卒で入社。営業、マーケティング、商品開発、調達部門に従事した後、販促事業部長や管財部部長などの役職を務める。2011年に執行役員、2015年に取締役を経た後、20204月よりフジテックスの代表取締役社長に就任。事業構想大学院大学 事業構想修士(MPD)課程修了。

株式会社フジテックス 代表取締役副社長 塩塚 敬(しおつか・たかし)
西南学院大学卒業。2000年に富士テック(現フジテックス)へ新卒で入社。販促事業、環境事業の他、新規事業として復興事業、物流事業、リユース事業の立ち上げ、東北本部(仙台)開設、人事・法務などの管理部業務に従事。数多くの失敗を経験し、2020年より代表取締役副社長に就任。事業構想大学院大学 事業構想修士(MPD)課程修了。

What's 株式会社フジテックス】
「事業を通して、社会の一翼を担う」というミッションのもと、市場環境の変化、顧客動向の変化を先読みし、「商人の集まり」として新事業を創造し続け、今日まで非連続な成長を実現している。現在、販促事業、環境事業、物流事業の3つの主要事業に、エネルギー事業、リユース事業、人材事業、健康事業、サニテーション事業の5つの成長事業を加え、8つの事業を展開する総合商社。


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クライアントや時代の変化に合わせ、100事業展開を目指す

ーフジテックスの事業内容を教えてください。

塩塚 当社の原点は、店頭の販売促進や飲食店のメニューに使うラミネートフィルムの専門商社。そこから大型のインクジェットプリンターや出力用紙など、あらゆる販促資材の販売や販促物の制作受託を行うようになり、様々な事業へと派生していきました。現在では「販促」「環境」「エネルギー」「物流」「リユース」「サニテーション」「健康」「人材」の8事業を展開しており、年商10億円規模のビジネスを100事業展開して「売上1,000億円の商社」を目指す100事業構想を経営目標の一つに掲げています。

ー事業領域が多岐にわたりますが、どのような軸で事業を拡大されているのですか。

塩塚 多くの事業が、営業現場でキャッチしたお客様の課題がもとになっています。例えば環境事業もそのひとつ。創業当初、街の酒屋さんが使うプライスカードのラミネート加工をお手伝いしていたのですが、当時の酒屋さんでは空き瓶を買い取ってリサイクル用に破砕するという作業が行われていて、「手で割ると危なくて困っている」という話がお客様からよく出ていました。そこで生まれたのが、瓶の破砕機を販売する事業。それが環境事業へと発展し、今では販促事業と並ぶ収益の柱となっています。

一森 会社の経営判断で立ち上がった事業もありますが、実際にお客様と接しているのは経営陣ではなく現場の営業ですので、営業が見聞きしたり直感的に感じ取ったりしたことを上へ提案できるような施策には力を入れています。当社は社長室もなくワンフロアで風通しが良いので、日常的に社員とコミュニケーションをとってお客様のニーズを知るようにもしています。

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コロナ禍での業績低迷を乗り越えた「現場力」

ーお二方は新卒でフジテックスに入社し、2020年に社長・副社長に就任されています。
 会社のトップとなって最初に挑んだミッションは何でしたか。

一森 当時は売上100億円を目前に控えていた時期で、その先の成長を牽引することが私たちの使命でした。しかし、ちょうどコロナの感染が拡大し始めたタイミングと重なり、まずは目の前の壁を乗り越えなくてはならない状況に。店舗営業やイベントの自粛により、主力事業である販促・環境・物流事業の業績が一気に落ち込んでしまったのです。経営の責任者となった途端に未曾有の危機に直面し、毎日必死でした。

ーその危機をどのように乗り越えたのでしょうか。

一森 当社はお客様のニーズや時代の変化に合わせて事業を展開してきた会社。こういう情勢のときこそ力を発揮できると信じ、当時お客様が必要としていたアルコールやパーテーション等の衛生管理用品を販売するサニテーション事業を立ち上げました。もともと持っていた海外のネットワークを使って何とか商品を仕入れて、事業部の垣根を越えて全員で販売したのです。

当社には、社員一人ひとりが商人であることを意識し、時代やお客様の変化に適応していくというマインドが根づいています。クロスセルの文化も浸透しており、お客様の困りごとを解決できるのであれば自分の事業部以外の商品も販売し、必要なら商品開発もするというスタイルがスタンダードです。コロナ禍の混乱の中でもサニテーション事業をスタートできたのは、社員が自ら考えて動く「現場力」がもともと強く、お客様のニーズや新規事業に対するアンテナが高い組織だったからこそ。結果的にその年は過去最高益を記録しました。こんなに全社一丸となったのは、私が入社して以来初めてでしたね。

塩塚 このような背景で立ち上げたサニテーション事業は、最初のうちは各事業の既存のお客様向けだったのですが、途中から介護・福祉・教育といった新規のお客様とのつながりができました。なかでも介護はこれからの社会を担う重要な業界ですので、介護業界向けに物販や情報提供を行う新規事業の立ち上げも視野に入れているところです。

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1,000億円商社」のその先の成長までイメージできた

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左からジャフコ水谷、塩塚氏、一森氏、ジャフコ小池

20227月にジャフコと資本提携し、新たなスタートを切りました。経緯をお聞かせいただけますか。

塩塚 今回の資本提携は、当社の創業者である東英弥(学校法人先端教育機構 理事長)が、グループから当社を独立させてさらに成長させるために数年前から検討していたものです。実際に資本提携先を募集したところ複数社が手を挙げてくださり、10社ほど面談して提携先に決めたのがジャフコさんでした。ジャフコさんは50年に渡り4,000社を超える投資実績があり、ファイナンスの話よりも、当社が成長していくために必要なことを的確に提示してくださり、更に対応が最も紳士的な会社だった。それが決め手になったと聞いています。

一森 東理事長から見せられたジャフコさんの提案書がとても印象に残っています。当社が掲げている「売上1,000億円」のさらに先の「2,000億円」を目標にしたロードマップで、国内シェア拡大やM&A、海外展開、IPOに向けた管理体制の強化等、グローバル企業へのプロセスが具体的に示されていました。投資先4,000社のうち1,000社以上を上場に導いてきたジャフコさんと戦略的パートナーシップを結ぶことができれば、「1,000億円商社」はもちろんその先の成長も実現していける。そうイメージできる内容でした。

水谷 ご経験豊富な実業家である東理事長の頭の中では、おそらく1,000億円までの道筋はすでに描けている。であれば、そこを超えるビジョンを提示する必要があると考え、社内で議論して作成したものです。ジャフコは事業家のパートナーですので「フジテックスはこういう会社だと考えています」「フジテックスのここが素晴らしい点で、ここをもっと伸ばしていくと更に成長の確度を上げられると思います」「そのために私たちとしてはこれらの施策を、この様なスケジュール感で経営陣・役職員の皆様と共に伴走して進めさせていただきたいと考えています」という内容を、シンプルに提案させていただきました。結果的にはそれが、今回我々にフジテックスを託していただくに至った意思決定の一助になったのではないかと思っています。

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ー投資担当者の立場から見て、フジテックスのどのような点に可能性を感じましたか。

水谷 時代に合わせて注力事業を変化させながら直近13期連続で増収増益を続け、コロナ禍でも業績を伸ばしている。これは最初パッと数字と事業ポートフォリオの変遷を見たときに率直に「すごい!」と思いました。さらに利益率は同業他社と比べて約2倍。既存顧客との取引を安定的に継続しつつ、新規顧客も毎年しっかり増やしているので、フローではなくストック型のビジネスを確立できているんです。日本では長い歴史のなかで、幾度となく「商社不要論」「商社斜陽論」が唱えられてきました。そのような環境の中で、常に圧倒的な利益率を叩き出し、商社という業態の付加価値を証明している会社だと思いました。

一方で、成長の余地も感じました。営業面は非常に強いですが、管理面の整備はこれから。データを活用したクロスセルのさらなる推進、M&Aによる事業拡張、海外展開等も、今後着手して成長につなげられる部分です。これらを強化していけば、もともと攻めが強い分、グッドサイクルが生まれると確信しています。

小池 近年、サーキュラーエコノミーやESGといった観点が重視されていますが、具体的に何をすれば良いかわからないという企業も多い。そんな中でフジテックスは「環境」を軸にすでに事業を展開しており、時代に非常にフィットしている点も魅力のひとつです。

一森さん、塩塚さんと最初にお会いしたとき、お二人とも「中小企業から大企業へステージを上げていきたい」と強く仰っていて、実際に100事業構想実現に向けて柔軟に変化しながら事業を創造しようとしている姿勢が印象的でした。ジャフコも「新事業の創造にコミットし、ともに未来を切り開く」というミッションを掲げているため、思考の方向性が非常に似ていると感じました。同じ方向を見ているフジテックスであれば、当社が投資させていただくことでシナジー効果を最大限に発揮できると考えています。

ー資本提携によりグループ会社から独立し、ご自身の意識や経営面で以前との違いを感じることはありますか。

塩塚 もともと東理事長から権限を任されていた形だったので、独立企業になって大きく変わったことはあまりないですね。独立した今でも、お客様の役に立つのであればグループ会社を紹介することもありますし、良い関係を保てていると思います。

ただ、ジャフコさんに伴走してもらうようになり、まずは経営管理体制を整備していただいているのですが、今まで属人的だったものが一気にシステム化されて、そこは非常に良い変化を感じています。キャリア採用や営業アライアンス等もバックアップしていただいているところです。資本提携後の最初のミーティングで、ジャフコさんから今後のタスクが130個くらい挙がってきたときは驚きましたが(笑)、それをひとつずつ着実にクリアすることで前に進んでいる手応えを感じられています。


「攻め」と「守り」の双方を強化し、さらなる成長企業へ

ージャフコと共に今後取り組んでいきたいことを教えてください。

一森 まず「攻め」の強化として、海外展開を含め事業拡大に積極的に取り組み、売上1,000億円への成長基盤をつくっていきたいと考えています。「守り」の部分では、CFOの採用をはじめ経営管理体制のさらなる強化も直近の課題。また、コロナ禍の混乱を乗り越えた今のタイミングで、改めて皆の気持ちをひとつにまとめ、これから成長していく会社にふさわしい活気や勢いを醸成していく必要もあると思っています。

「攻め」と「守り」の双方を強化し、まずはIPOに向けてしっかり準備をすること。そして、今まで以上に変化に強い組織をつくり、世の中の変化にいち早く対応し続けられる企業へ進化することを目指します。

塩塚 価値観の多様化が急速に進むポストコロナ時代において、企業理念と社員個人のパーパスをリンクさせて仕事のモチベーション、やりがい、面白さにつなげていくことは一層重要になると考えています。そこで2年前から、定量的な目標だけでなく定性的な目標を一人ひとり設定して評価にも反映することで、成長意欲を醸成する取り組みを続けてきました。今回、この取り組みをさらに効果的なものにすべく、ジャフコさんの協力のもと人事責任者をキャリア採用しました。これまで蓄積してきたことに専門的な知見を取り入れ、人事評価制度をアップデートすることで組織全体の活性化に繋げていくことも今後の目標です。

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ー最後に、経営者として大切にしている志をお聞かせください。

一森 当社の経営ビジョンでもありますが、「未来を拓く、100事業を創る。」です。

100事業構想を実現し、この先50年、100年も永続的に存続発展し、事業を通して、社会の一翼を担う企業でありたいと本気で思っています。そして、構想を実現していくうえで、大切にしている言葉があります。入社してすぐに東理事長から教わり、今も大切にしているのですが、リンカーンの「意志あるところに道は拓ける。」どれだけ立派な計画でも、それを実行してやり遂げる強い意志がなければ成功はありません。トップになった今、その言葉をより一層実感していますし、困難な時や新しいことに挑戦するときには、この言葉を思い出し、自らを奮い立たせるようにしています。今後も大切にしていきたい言葉ですね。

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塩塚
 私はやはり、東理事長が20代半ばでフジテックスを創業する際につくった、「私たちは、お客様により良い商品を提供します」という企業理念です。時代の変化と共にお客様が必要とする商品(製品・サービス・情報)も変わり、そこに対応して永続的な利益を上げていくためには、私たち会社も日々進化していかなければなりません。お客様に貢献し、社会・業界・お客様から必要とされる存在になることが、社員一人ひとりの成長、やりがいや誇りにつながり、組織はさらに発展していきます。シンプルな言葉の中に、商社として必要なすべてが凝縮されている。この先、企業規模がどれだけ拡大しても、常に胸に留めておきたい言葉です。

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担当者:水谷太志小池真矢からのコメント

_DSC9922_トリミング②_WID300で登録→280かも.jpg商社に求められる役割は、日々変化・多様化しており、おそらく10年後には今よりも大きく変わっていると思います。常にアンテナを立て、変化に敏感でありながら、伸びていくであろうマーケットを探り当て、掘り起こし、扱う商品やサービスを柔軟に組み換えていける商社が生き残り、単に同じ商品を右から左へ流すような商社は淘汰されていくでしょう。商社が介する意味を理解し、大切なお客様の課題を解決するためにモノや人や情報を組み合わせ、最適なソリューションを追求できる会社だけが残っていくと考えております。フジテックスはマクロ環境変化、顧客動向変化の先読みを行い、新事業創造を次々と手掛ける「商人の集まり」です。これまでは「環境」を軸に、時代に合った事業を展開してきましたが、将来マーケットが変われば柔軟に変化していける強みも備えています。ジャフコとしてはM&Aや海外展開を進め、幹部クラスを含めた人材採用も強化して、フジテックスの成長に繋がる施策を、経営陣・役職員の皆様と共に、引き続き進めていきます。