【What's 株式会社ティアフォー】
ティアフォーは、「自動運転の民主化」をビジョンとし、世界初のオープンソースの自動運転ソフトウェアであるAutowareの開発を主導する日本のディープテック企業として、自動運転システムの社会実装を推進しています。
創業:2015年12月 / 9年目、従業員数:約330名、累計調達額:381億円 / シリーズB調達時
※記載の内容は2024年7月時点のもの
スタートアップの壁 - ティアフォー編。
スタートアップが直面する「壁」について、今回はティアフォーにお話を伺いました。
これまでに動画でお届けした5つの内容の総集編としてご覧ください。
「壁がない」経営者の境地
<出演者> 代表取締役社長 加藤真平
2008年慶應義塾大学大学院で工学博士号を取得後、カーネギーメロン大学、カリフォルニア大学にて研究員を務め、2012年に名古屋大学准教授に就任。自動運転ソフトウェアのAutowareを開発し、2015年にオープンソースソフトウェアとして公開。2016年から東京大学准教授、2023年より特任准教授。
名古屋大学教員からスタートアップ創業者へ
加藤さんは名古屋大学の教員として、コンピュータサイエンスを教えていました。自動運転のプロジェクトを大学で進めたところ、企業が一緒に取り組むようになり、本格的に事業として取り組む決意を固めたそうです。その後のことについて、「気が付いたらスタートアップができていた」と語る加藤さんは、当時のことがあまり記憶に残っていないほど目まぐるしい日々を送っていたとのことです。しかし、徐々に会社としての形を整えていき、事業や技術、経営の進捗が同期しながら進んできたと述べています。
ティアフォーのビジョンは「自動運転の民主化」です。加藤さんは、あらゆる組織や個人が自動運転を利用できるようにしたいと考えており、特定の企業だけが強い状態をなくしたいとのことです。そのための鍵となるのはオープンソース。加藤さんは、利益や売上だけでなく、その価値をもって世界のトップであるという世界観を作りたいと語っています。
ティアフォーが開発を主導するAutowareを取りまとめるThe Autoware Foundationを通して、現在60を超える世界中のパートナーと協力しており、そのパートナーに関わる企業は数千社にも上ると考えています。この経済圏の規模は拡大し続けており、加藤さんは、Linuxの成功を自動運転の領域で再現したいと考えているそうです。
変わらない信念と柔軟な対応力
加藤さんはディープテック企業の経営についても語っています。社員が300名に達するまでの過程では、事業と技術の進捗に合わせて会社が大きくなってきたとのことです。しかし、オープンソースを推進しているため、ティアフォー自体の規模は誤差の範囲だと感じているとのこと。経済圏が大きくなることを優先し、その中心にティアフォーがいることが重要だと考えています。
組織づくりにおいては、優秀なマネージャーがつくと組織が大きくなるとしながらも、文化や雰囲気の方が重要だと考えているそうです。ここでは「組織を作るな、文化を作れ」「会社を作るな、事業を作れ」という考え方を大切にしています。
採用時には、ビジョンに共感してもらえるかが重要視され、自動運転の民主化やオープンソースへの共感が大事だと述べています。フェーズによって採用のアプローチは変わり、初期は文化やビジョンへの共感が重要ですが、組織が大きくなるにつれて具体的な業務に対応できる専門性をもった人材の重要性が増してくると考えています。
「壁が存在しないことが最も成功している状態」と語る加藤さんの経営哲学については、ぜひ動画でご覧ください。
<「壁がない」経営者の境地の動画はこちら >
技術開発の壁
<出演者> R&D Unit 高島 芳仁
ペンシルベニア大学で情報科学と数学の学士・修士号を取得。ティアフォーの研究開発技術を担うR&D Unitを取りまとめる。前職では米国のマイクロソフト、アマゾンのソフトウェアエンジニア、及びマネージャーとして17年程さまざまなシステム開発に従事。
アマゾンからティアフォーへ
高島さんはペンシルベニア大学を卒業後、アメリカとカナダでソフトウェアエンジニアとして働いていました。主に自動車や自動運転とは関係のない分野で、MicrosoftやAmazon本社でOSやクラウドサービスの開発に携わっていたそうです。
新型コロナウイルスをきっかけに日本に帰国した高島さんは、最初の1年ほどアマゾンジャパンでマネージャーを務めました。その後、ティアフォーに入社したのは今から2年ほど前のことです。ティアフォーのCEOである加藤さんとは学生時代からの知り合いで、以前からティアフォーの事業について話を聞いていたものの、自分には関係のない世界だと思っていたそうです。
しかし、加藤さんと再び話す機会があり、ティアフォーでクラウドサービスの重要性が高まっていることを知り、自身のバックグラウンドとマッチするのではないかと考えるようになったことが入社のきっかけとなったと述べています。また、ティアフォーの事業の性質上、将来的にグローバル展開の可能性があると考えたことも入社を決めた理由だそうで、海外での経験を活かしてメンバーと共に大きなことを成し遂げたいという夢を持つようになったと語っています。
「研究開発」から「製品開発」へ
技術開発の壁については、スタートアップだからこそ日々さまざまな壁にぶつかっていると述べています。技術の進歩や社外からの期待に応え、世の中で使われる技術開発を進める中で、研究開発のフェーズから製品開発のフェーズに移行しているそうです。自動運転の実証実験は公道で行っており、責任感や安全性が問われる技術開発が重要になっていると話しています。
また、研究開発は長い道のりであり、中長期的に考えなければならない一方、投資家の期待に応えるためには短期的なスパンで成果を出す必要があるとのことです。高島さんは、この「短期の成果」と「中長期の研究」のバランスを取りながら事業を成長させたいと考えています。
高島さんは、特定の分野において突出して優秀な人材を採用することで壁を乗り越えられたと話しています。それぞれの強みを生かして同じ社会課題の解決に取り組むことの重要性について語る高島さんの動画を、ぜひご覧ください。
<「技術開発の壁」の動画はこちら >
認可取得の壁
<出演者> Productチーム 飯田祐希
立命館大学大学院情報理工学研究科卒業。ティアフォーではWeb.Auto、Pilot.Auto、Edge.Autoを取りまとめるプロダクトオーナーを務める。前職では自動運転向けの運行管理システムを開発。
自動運転の技術提供から車両開発へ
飯田さんは自動車が好きで、人々の移動を通じて生活を豊かにする社会実装を進めたいと考え、創業して間もない2017年にティアフォーに入社しました。当時はエンジニアしかいなかったティアフォーも、現在は社員数が300人以上に増えましたが、共通の目標を達成するために熱く語り合う点は変わっていないと述べています。組織が強固になった要因として、さまざまな業界や業種を経験してきた人材が続々と入社していることを挙げています。
飯田さんは、自動運転の産業自体が確立されていない中で、認可取得を目指してきたそうです。認可取得の過程では、ゴールの基準を作るところから国と一緒に取り組んだと語っています。
ティアフォーは自動車メーカーになりたいわけではなく、完成車メーカーに対して自動運転技術を提供するビジネスモデルを採用してきました。しかし悩んだ末に、ソフトウェアを開発している会社であるティアフォーが、自動運転レベル4に対応する車両づくりへのチャレンジをする意思決定を行います。
パートナーエコシステムの活用
ティアフォーの一番の強みは各業界のエキスパートが集まっていることだと飯田さんは述べています。自動運転レベル4の認可を取るためには、ソフトウェアの技術力だけではなく、車の構造、つまりハードウェアから変える必要があったといいます。ソフトウェアの会社であるティアフォーにとって、ここでビジネスにおける壁を感じたそうですが、各業界のエキスパートが知恵を出し合うことでその壁を乗り越えられたと考えています。結果として、各業界のエキスパートと協力してレベル4自動運転車両を作ることができたと述べています。
自動車業界は経済規模が大きく、1社だけでは成長できないため、パートナーエコシステムを活用して全体として自動運転を実現することが重要だと飯田さんは考えています。認可取得の壁を乗り越えられた理由として、自分の強みを生かして貢献できるメンバーが集まったからだと述べています。
ティアフォーはBtoBのビジネスを展開していますが、飯田さんの個人的な展望としては、本当のエンドユーザーに届くプロダクトを作りたいと考えています。その詳細や意気込みについては、ぜひ動画をご覧ください。
<「認可取得の壁」の動画はこちら >
社会実装の壁
<出演者> Business Unit 多米 真莉子
慶應義塾大学法学部卒業。ティアフォーでは自動運転ソフトウェアの開発運用プラットフォームの事業を推進。前職では富士通でグローバル戦略アライアンスやモビリティソリューションの事業開拓などを担当。
パートナーシップで壁を乗り越える
多米さんは慶應大学法学部を卒業後、富士通でグローバル戦略アライアンスやモビリティソリューションの事業開拓などを担当していたそうです。ティアフォーでは自動運転ソフトウェアの開発運用プラットフォームの事業を推進しています。
多米さんの入社の経緯については、「日本の素晴らしい技術を世界に発信したい」という想いを持って仕事をしていたところ、自動運転技術の将来性に期待を抱き、ティアフォーに転職を決意したそうです。グローバルな仲間と切磋琢磨するティアフォーの理念に共感し、現在はパートナー企業と一緒に自動運転ビジネスを広げる仕事に従事しています。
多米さんは、ハードウェアとソフトウェアのインテグレーションを支援しており、公道を実際に走らせたデータを基に課題の洗い出しと改善を行うサイクルを回すことで、最近では一度限りの実証実験だけでなく、定期的かつ継続的な支援を行う自治体も増えていると話しています。
自動運転は非常に魅力的で多くの人の役に立つ技術だと考えていますが、人の命に関わるビジネス領域であるため、安全に運行することが重要だと強調しています。ティアフォーだけでは成し遂げられないことが多く、自治体や交通事業者、完成車メーカーなどのパートナー企業と協力しながら、一つひとつの壁を乗り越えてきたと語っています。
真の社会実装へ向けた歩み
社会実装の手応えを感じた瞬間について、多米さんは、「1回きりの実証ではなく、定時運行を行い、その地域の方に生活の一部として使っていただける実績を積めた時」と述べています。しかし、ドライバーがいなくても自動運転システムのみで運行できた時が本当の社会実装だと考えており、そこに向けて少しずつステップを歩んでいるそうです。
パートナー企業との関係構築については、自動運転の技術と実装の面でノウハウを持っているティアフォーが、ユーザーとなる自治体やパートナー企業と密にコミュニケーションを取り、関係構築することが大事だと述べています。お互いの思いをぶつけ合うことで、それぞれの得意分野を生かしながら、より良い社会を築く共通の想いを持っていると語っています。
前職の大手企業とは異なり、スタートアップであるティアフォーでは、リスクを取って新しい領域を切り開く力が強いと感じているそうです。一方で、商品化のプロセスや品質管理に関しては大手企業が強みを持っており、それぞれの役割分担をしながら並走することが協業において重要だと考えています。
多米さんが語る、真の社会実装へ向けた歩みについては、ぜひ動画をご覧ください。
<「社会実装の壁」の動画はこちら >
未来の壁
<出演者> 代表取締役社長 加藤真平
敵を作らず「無敵」になる
加藤さんは、実際には「壁」と呼べるような出来事があったかもしれないが、それを「壁」と認識せずに経営を続けてきたと述べています。会社のミッション、ビジョン、コアバリューは変わらないものの、フェーズに応じて柔軟に対応しているそうです。周りの状況に合わせて組織、技術、事業を変えていかなければならないと考えています。
ビジョンの浸透について、加藤さんは、「そもそもビジョンに共感して入社してくれているはず」と話しています。経営者としては、壮大なビジョンを掲げて主観で発信することが大事だと考え、コアバリューについては入社後に分かってもらえるようにコミュニケーションをしてきたそうです。
また、周りのステークホルダーや状況を分析し、その上で自分がやりたいことを理解して伝えていくことを意識していると語っています。ティアフォーはオープンソースでビジネスを展開しているため、敵を作らないことが大事であり、ティアフォーの経済圏を広げ、「戦わずして進んでいく」ことが重要だと考えています。
ティアフォーが実現を目指す未来の景色について話を触れていくと、自動運転の技術が社会に広まるほどコストが下がる一方、広まらなければコストで経営が圧迫されるため、いかに社会に受け入れられながら広がっていくかが大事だと話しています。そのためのポイントは大きく2点。まず1つ目は事故のリスク、そして2つ目はタクシーやバスのドライバーなどの雇用の減少。この2つを考慮したメッセージを発信していくことを挙げています。
加藤さんは、自動運転の技術が優れていても完全に自動化する必要はなく、事故が起こる可能性も意識した準備を進めること、そして運転の負担を減らすことで雇用を広げる可能性があると考えています。そのためには、自動運転の使い方を正しく理解してもらい、広めていくことが必要だと述べています。
敵を一人も作らずに経営すること、つまり『無敵』になることを目指す加藤さん自身の経営者としての挑戦については、ぜひ動画をご覧ください。
<「未来の壁」の動画はこちら >