JAFCO採用

いかなる時代でも投資を継続すること——50年の歴史が示す、JAFCOの原点と矜持

今回は、2003年に新卒でジャフコ グループ(以下、JAFCO)に入社し、採用プラットフォーム「ビズリーチ」で有名なビジョナル株式会社を担当するなど、投資部長兼パートナーとして日本のスタートアップ投資の最前線を走り続ける藤井 淳史にインタビュー。

世の中にベンチャーキャピタル(VC)という言葉すら浸透していなかった時代から、リーマンショックの荒波、そして現在に至るまで、激動の20年を経験してきた藤井。その目に映るVCの役割の変化、JAFCOならではの強み、そして未来を担う若者への想いを、率直な言葉で語りました。

藤井 淳史
2003年、新卒でJAFCOに入社。以来、20年以上にわたりベンチャー投資の最前線で活躍を続ける。IT領域を中心にしつつ、製造・サービス業まで手がけた投資は多岐にわたる。2018年にパートナーへ就任し、2025年より投資部長を兼務する。

世の中の会社の成長を手伝いたい。就職氷河期に見つけた「意義のある仕事」

――入社当時、まだVCという仕事は一般的ではなかったと思います。どのような経緯でこの世界に入られたのでしょうか?

就職活動をしていた2002年は、まさに就職氷河期の真っ只中でした。大学では企業経営を学んでいて、元々「世の中の会社の成長を手伝いたい」という思いがあったんです。だから、コンサルや銀行、人材会社など、様々な企業を受けました。当時は大手企業が経営危機に陥るような時代で、立ち直れば社会に大きなインパクトを与えられるはずだと、潰れそうな会社に「入社して頑張りたい」と本気で訴えては、面接で落とされていましたね。

そんな中、就職サイトで偶然JAFCOを見つけ、初めてVCという事業を知りました。最初は「変わった社名だな」と思いましたが、事業内容を知って「こんないい仕事があるのか」と衝撃を受けました。儲かりそうという意味ではなく、「社会的に意義がある」という意味で、です。

VCは、自分たちが投資したお金を元に相手が成功しない限り、自分たちの利益にも繋がらない。企業の成長と自分たちの成功が完全に一致するこの仕組みは、本当にフェアで、本質的だと思いました。会社の成長を直接サポートできる。そこに強く惹かれましたね。

焼け野原から新たな芽が育つまで。業界の変遷と共に変化したVCの役割

――入社から約20年、VC業界は大きく変化したと思います。藤井さんはその変化をどう見ていますか?

私が入社した2000年代は、まだ「上場とは何か」「VCとは何か」を企業に1から説明して回るような、「啓蒙」の時代でした。すでに事業が伸びている中堅企業にアプローチし、上場や外部資金の調達を提案するのが主な役割でしたね。

その後の2008年のリーマンショックは、VC業界に深刻な影響を与えました。それ以前に活動していたVCの多くが撤退や縮小を余儀なくされ、事実上の破綻に追い込まれるケースもありました。VCの姿も市場からほとんど消え、起業家も減少。投資先を探すこと自体が困難な冬の時代でした。

しかし、世の中が一度焼け野原になったことで、新しい芽が育つ土壌が生まれたとも言えます。外資系企業や大企業などから優秀な人材がスタートアップの世界に流れ込み、そこから新しい会社が次々と生まれた。今後はスタートアップ業界全体、そしてVCも同様に、これからはグローバルな視点を自然体で持ち、感度高く考えられる人が増えていくと思います。

そうした流れの中で、日本からAmazonやGoogleのような規模の企業が生まれても不思議ではありませんし、同じように日本発のトップティアのベンチャーキャピタリストが登場してもおかしくないと思います。むしろ、そうあってほしい。日本のVCが、グローバルの舞台でも「大手」と呼ばれる日が来ると思っています。

振り返ると、VCの役割も大きく変わりました。様々な資金の出し手が登場している現在、お金や人脈を提供する以上のことが求められています。競争が激化した今こそ、VC本来の役割である「リスクテイク」がいっそう重要になっていると感じます。

「儲かっているか」から「共に未来を描けるか」へ、判断基準が変化

――VCの「リスクテイク」について、もう少し詳しく教えていただけますか?

入社当時はすでに売上が立っていて、事業基盤が固まっている会社に、さらなる成長のための資金を提案する側面が強くありました。

しかし今は、まだ売上が立っていない、あるいは創業して間もないような、不確実性が非常に高い段階で判断する、すなわち「リスクテイク」が求められます。スタートアップからすれば、早い段階で投資を受けられるほど、事業の勝率が上がるからです。

では、何をもって判断するのか。それには、スキルやロジック以上に「起業家と同じ目線で、共に未来を臨めるか」というスタンスが重要になります。もちろん、標準的な会計の知識や法律といった社会のルールを理解していることは大前提です。その上で、事業の細部まで深く理解し、全体の市場動向(マクロ)と個別の事業の実態(ミクロ)を常に行き来することが求められます。

未来は誰にも分かりません。だからこそ、足元の状況や近い将来を徹底的に解像度高く理解する。その先にどんな未来を描けるのか、起業家と同じ目線で信じられるかどうか。そうした覚悟がなければ、投資を決断することはできません。

40人の「集合知」と、甘えを許さない「自己規律」。プロフェッショナル集団が目指すもの

――数あるVCの中で、JAFCOの社会的価値や責任はどこにあるとお考えですか?

まずジャフコは国内でも最大規模のファンドを運用しています。

それが出来ているのは、リーマンショックのような危機的な状況でも、社会が大きく変化する時には必ず新たな事業機会が生まれると信じて、リスクマネーを供給することで、ファンドパフォーマンスを維持・向上させてきたからだと自負しています。

そして、その為には「世の中の潮流をより深く、立体的に捉えることが出来ていること」と「一人一人が自己規律を持ったプロフェッショナルとして働いていること」の2点が重要なことだと思っています。

情報を得る最良の方法は起業家に会うことです。ある事業領域について、24時間考え抜いている起業家から得られる情報は非常に価値が高いです。約40名のキャピタリストが独自の視点で投資先を開拓し、得た情報を組織として束ねることが出来ています。40人分の最前線の情報が集まり、議論されることで世の中の潮流をより深く、立体的に捉えることができている。これも他にない大きな価値だと考えています。

また、こうした活動を支えているのが、プロフェッショナルとしての「自己規律」です。VCの仕事は、投資してから結果が出るまで長くて10年もかかる長期戦。将来が不確実なこともあり、非常に「甘え」が生じやすい構造なんです。例えば、私が今日一日嘘をついてサボったとしても、10年後の成果に大きくは影響しないかもしれない。

野球選手の打率に例えるなら、3割打者と2割5分の選手では大きな差がありますが、1打席の結果だけを見れば大差ないですよね。しかし、そのわずかな差は、日々の絶え間ない努力の積み重ねで生まれる。VCも同じで、常に自分には足りない面があると自覚し、学び続ける謙虚な姿勢がなければ、甘えが生まれ、パフォーマンスは低下し、継続は難しくなります。私たちは、そうした自己研鑽を続けるプロフェッショナルの集まりでありたい。隣で頑張る仲間がいるからこそ、自分を奮い立たせられる。そんな組織文化を、これからも大切にしていきたいと思います。

ジャフコの価値は、社会情勢が良い時も悪い時も、スタートアップエコシステムに「継続的に資金供給を続ける」という、インフラ的な役割を果たし続けていることだと自負しています。

長期的な視点で大胆にリスクを取り、投資を「継続する」ということが、社会課題の解決や人々の豊かさの向上に繋がり、パーパスで掲げている「挑戦への投資で、成長への循環をつくりだす」ことの体現であると思っています。

正解のない暗中模索の先に。それでも、この仕事に惹かれる理由

――最後に、VC業界を志す学生や若手の方々へメッセージをお願いします。

VCの仕事は、長期にわたって結果が見えにくい、暗中模索のストレスを常に抱える仕事です。正直、楽しいことばかりではありません。だからこそ、この仕事のどこかに、自分の価値観とリンクするものがないと、長く続けるのは難しいと思います。

「人と会うのがとにかく好き」「新しい事業モデルを考えるだけでワクワクする」――。何でも構いません。自分が夢中になれる何かとこの仕事が結びついていることこそが、長い道のりを走り抜くための原動力になります。

日本のスタートアップエコシステムは、まだまだ発展途上で、日本だけに止まらずグローバルでの活躍を目指します。かつて、日本人がメジャーリーグでホームラン王になるなんて誰も想像していませんでしたが、野茂英雄さんやイチローさんのような先駆者の成功が、大谷翔平選手のようなトッププレイヤーを生み出しました。同じように、スタートアップの世界でも成功を積み重ねていくことで、日本から世界的な企業が生まれると信じています。

自分たちの世代が終わった後も、価値ある会社が生まれ続ける社会を創っていく。私たちは、そのバトンを次の世代に繋ぐ役割を担っています。正解のない未来を、起業家と共に描き、実現していく。この挑戦に少しでも心が動いた方は、ぜひ私たちと共に挑戦しましょう。皆さんとお会いできる日を楽しみにしています。