投資先インタビュー

デジタルマーケティング2社のシナジー効果でさらなる成長へ。ジャフコと共に挑んだロールアップ戦略

様々な課題を乗り越えてきた経営者達に、経営者として大切にしている志や、事業を通じて実現したい想いを聞く「経営者の志」。

第3回は、ユナイト・ホールディングス株式会社 代表取締役CEOの芳賀一生氏に登場いただき、投資担当者の合田晴紀・髙平将史からの視点と共に、これからの事業の挑戦について話を伺いました。

ユナイト・ホールディングス株式会社

代表取締役CEO

芳賀 一生(はが・いっせい)

ユナイト・ホールディングス株式会社 代表取締役CEO 芳賀 一生(はが・いっせい)

ヤフー株式会社、アマゾンジャパン合同会社などを経て、株式会社リブセンスへ入社。不動産テックサービスであるIESHIL(イエシル)の新規事業立ち上げ、スターツ社とのJV立ち上げ、転職会議事業部の部長や執行役員に従事。その後、2021年12月にUPPGO(アップゴー)株式会社 代表取締役に就任。2024年4月にはユナイト・ホールディングス株式会社 及びZOOST(ズースト)株式会社 代表取締役CEOに就任。

【What’s ユナイト・ホールディングス株式会社】

大手企業向けに自社メディアを通じたデジタルマーケティングを行うUPPGO株式会社と、中堅・中小企業向けにリスティング広告運用やWebサイト制作を行うZOOST株式会社の100%持株会社として、2024年2月に設立。両社共に、Google Partnerのうち各国上位3%の広告代理店が認定される「Google Premier Partner」への認定実績を有するなど、デジタルマーケティングを通じて顧客の成長を支援する専門企業として認められている。

Portfolio

UPPGO株式会社

ZOOST株式会社

デジタルマーケティング企業2社の連携で、ソリューションの幅を広げる

ーユナイト・ホールディングスが擁するUPPGOとZOOSTの2社について、それぞれの事業内容と強みを教えてください。

芳賀 UPPGOは、ユナイト・ホールディングスCOOの平川貴康が2010年に創業した会社を前身とするデジタルマーケティング企業です。平川は学生時代からパフォーマンスマーケティング(成果に基づいて広告料金が発生するマーケティング手法)で大きな利益を上げていたスペシャリスト。彼の豊富なノウハウを基盤に、主にHRと金融領域の比較メディアによる集客で、大手企業のマーケティングを支援しています。

比較メディアの中には、広告で集客するメディアとSEOで集客するメディアがあり、メインは前者。前者の場合、例えば「1億円を使って広告を運用し、数ヶ月後に成果が承認されたら1億1,000万円入金される」というような流れになるので、確実に利益を出せる実力がなければ非常にリスキーなビジネスなんですね。その点、当社は2010年から、もっと言えば平川が法人化する前の2000年代から継続してやってきましたので、その先発優位性が大きな強みだと考えています。

ZOOSTもデジタルマーケティングを展開する会社ですが、UPPGOとは顧客層や得意分野が異なります。前身は2007年創業のイーナという会社で、これまでに中堅・中小企業3,000社以上の広告運用と、広告効果を上げるためのLP制作を手がけてきました。当社はいわゆる“ビットバレー”のITスタートアップの次の世代にあたり、当時から様々な業界の企業を支援してきた実績があります。美容医療などのクリニックから、不動産、化粧品、老舗のお煎餅屋さんまで、幅広いジャンルの知見を有していることが強みです。

ー特色の異なる2社が同じホールディングスの傘下となり、どのようなシナジー効果が生まれていますか。

 芳賀 デジタルマーケティング一筋のスペシャリストが集まっているUPPGOに対して、マーケターがお客様の対応まで行うZOOSTはフロント業務が得意。それぞれの特色を活かし、同じお客様を分担してプロジェクト的な進め方をするなど、コラボレーションの事例は増えてきています。

また、近年はGoogleの「AI Overview」機能により、検索結果上部にAIの生成した要約が表示されるようになりましたが、それに伴い集客方法もSEOからAIO(AI検索最適化)へと変化しています。そこで現在ZOOST では、AIに選ばれるための記事制作やオウンドメディア制作のサービスも提供がスタートし、テクニカルな部分はUPPGOにも入ってもらう形で進めています。Googleで検索するとChatGPTのように回答が生成される「AIモード」も日本でスタートしましたし、技術進化に伴ってソリューションの幅を広げていく必要性は実感していますね。そのためにも、2社のシナジーを最大化できるような新しい取り組みに日々挑戦しているところです。

ー芳賀さんは2021年からUPPGOにジョインし、1年弱で代表取締役に就任されています。その経緯をお聞かせください。

 芳賀 私のキャリアの原点はエンジニアですが、その後、人材企業で営業、ヤフーでリスティング広告の企画、リブセンスで新規事業立ち上げなど様々な仕事を経験してきました。フリーランスでWeb集客ビジネスをやっていた時期もあり、その頃に平川と出会って「すごい人だな」とは思っていたのですが、当時はお互いに別の道を歩んでいました。

UPPGOに入社したのは、彼から「事業拡大に向けて新規事業を立ち上げたいと思っている」と相談を受けたことがきっかけ。私は徐々にBizDev寄りのキャリアを歩むようになっていたので、これまでの集大成として自分の経験が活かせたらと思いジョインしました。

ただ、スタートアップから上場企業まで様々な会社で働いてきた経験が買われ、結果的には事業サイドではなく経営企画を担うことに。まさか代表取締役にまで就任するとは思っていませんでしたが…(笑)。スペシャリストの平川に対して私はゼネラリストなので、UPPGOの経営を推進するにあたっては、それが最もバランスの取れた体制だったのだと思います。

ジャフコの伴走型支援で、「経営者は孤独」というイメージが払拭された

左からジャフコ髙平、芳賀氏、ジャフコ合田

ー2024年4月にジャフコと資本提携し、UPPGOとZOOSTの100%持株会社としてユナイト・ホールディングスが誕生しました。東京のUPPGOと大阪のZOOSTをホールディングス化することになった背景には、どのような戦略があったのでしょう。

芳賀 私がUPPGOの代表になった2021年はすでにコロナ禍。様々な対策を講じたのですが業績低迷を避けられず、当時の株主だったPEファンドの主導で売却活動がスタートしてしまいました。ただ、その中で運良くジャフコさんと出会い、UPPGOの株主から同じく出資を受けていたZOOST(当時の社名はイーナ)とのロールアップ型M&Aでホールディングス化する案をご提案いただいたんです。当時のUPPGOは事業の幅が狭く、このままの状態で更なる事業拡大を目指すのは難易度が高いと実感していたので、ジャフコさんからご提案いただいた戦略は予想外ながらも非常に魅力的でした。

ーロールアップ戦略を提案された際、ZOOSTにはどんな印象を持ちましたか。

芳賀 UPPGOは自分たちでメディアを作って利益を出すのが得意な会社。クライアント企業との間には代理店などが介在するため、企業の売上を左右する重要なマーケティングを担うのにお客様の顔が直接見えないという難しさを抱えていました。一方でZOOSTは、お客様と直接向き合って事業に取り組んでいる。お互いの強みを活かし合いながら成長していけるイメージはすぐに湧きましたね。

ーその後、2024年にホールディングス化が実現し、芳賀さんは持株会社と傘下2社それぞれの代表に就任されました。新体制になって最初に取り組んだことは何ですか。

芳賀 まずは大阪のZOOSTに通い詰めて、社員全員と1on1を実施しました。前職でPMI(M&A成立後の統合プロセス)を経験していたため流れ自体は理解していましたが、会社や社員の状況というのはやっぱりケースバイケースなので、「どんな思いで仕事をしているのか」「どんな課題を感じているのか」などをきちんと吸い上げたいと思ったんです。

その中で見えてきたのが、組織体制の課題。当時は部長2人を除いて全員が一般社員というフラットな組織で、新入社員が気軽に質問や相談をしたり、OJTのような形で先輩と一緒に成長したりできる環境ではありませんでした。今後の事業拡大のためにも改善が必要だと思い、役職を設けて組織を“縦”にしていく、ということを最初にしました。

反対にUPPGOは、「組織で勝つ」より「一人ひとりが最大限に力を発揮して勝つ」やり方のほうがフィットするので、あえて強めの組織化はしませんでした。その頃は業績ももう回復して順調でしたので、UPPGOの良さを伸ばすような経営を意識しましたね。以前は、ロールアップするなら類似性の高い企業同士のほうが運用しやすいと考えていたのですが、今はそれぞれの企業の良さを大事にしたホールディングスの形があってもいいのではないかと。2社の独自性を担保しつつ、連携しながら一緒に成長していく未来を想定しています。

ー合田さんと髙平さんは2025年からユナイト・ホールディングスの担当になり、現在はジャフコ4名体制でサポートしているとのことですが、それぞれの役割を教えてください。

合田 私は社外取締役として入らせていただいていますが、4名の細かい役割分担については特に決めていません。重要な会議には全員参加し、全員で考えて意見しています。その中でも髙平は現場に一番入り込んでコミュニケーションを取っていますね。

髙平 はい。週の半分くらいはUPPGOのオフィスにいるので、ジャフコというよりユナイトグループの社員になった感覚ですね(笑)。社員の方々と顔を合わせながら、社長室室長として芳賀さんの直下で特命係のような動きをしています。私は金融機関で従事してきた経験を最大限活かしつつ尽力させていただいております。

芳賀 ここまで深く現場に入っていただいていると、一緒に会社を動かしている実感が持てますね。PEファンドさんって立場的に気を遣わなければいけない存在だと思っていたのですが、ジャフコの皆さんには何でも包み隠さず相談できますし、壁打ちなどもしていただけて。…気を遣っていないわけではないんですけどね(笑)。

ー会社を共に成長させていくパートナーとして、良好な関係を築けているのですね。

芳賀 そうですね。ジャフコさんはよく「伴走」というキーワードを掲げていますが、本当にその通り。例えば採用支援で言うと、採用のエキスパートの方が尽力してくださっていて、最近ではZOOSTの事業部長クラスを採用することができました。営業支援に関しても、ジャフコ独自のネットワークを使ったサービス提供の形を一緒に考えてくれています。

前までは「経営者は孤独」というイメージが強かったのですが、全くそう感じないほど伴走していただけていて心強く思っています。

合田 ありがとうございます。私は監査法人とコンサルティングファームを経てPEファンド業界に参画しており、「手触り感のある事業規模の企業を“伴走”という形で支援したい」という思いからジャフコに入社しました。ですので、そう仰っていただけると本当に嬉しいですし、今後もこの姿勢を大事にしていきたいと強く思います。

ージャフコの二人は、芳賀さんの経営者としての姿勢やユナイト・ホールディングスの可能性に対してどう感じていますか。

合田 芳賀さんの第一印象は「気さくで温和な方」。初めてお会いした際、私は入社直後だったため少し緊張していたのですが、芳賀さんのほうから気さくに話しかけて緊張を解してくれたほどです(笑)。経営者としての悩みや苦難も多々あると思いますが、常に前向きで、ピンチをチャンスに変えるマインドを持っていて、ZOOSTの皆さんにも新社長としてポジティブに受け入れられている印象です。

新たなスタートを切った組織には当然痛みも伴いますが、ユナイトの場合は今後の成長に向けた“良い痛み”だと感じているので、芳賀さんには未来を信じて突き進んでいただきたいです。抱えている課題はどんなことでも我々に共有いただいて、一緒に前進していきたいと思っています。

髙平 芳賀さんは「解は現場にある」という考えのもと、社員の皆さんの意見をうまく引き出しながら全員で事業を推し進めていくことに長けておられる経営者だと感じています。

インターネット広告の市場規模は3兆円を超えると言われており、もはや我々の生活から切っても切り離せないビジネス。流行り廃りのスピードも速く、常に新しいことにチャレンジしていかなければいけない業界です。ユナイトが持つ独自のナレッジやプロダクトを活かせば、業界のリーディングカンパニーになることも全く夢ではないと思っていますので、そこに向かって一緒にチャレンジし続けていきたいです。

日本の中小IT企業の集合体として、個を活かしながら世界に挑む

ーこの先、ホールディングスとして成長していくために、どんなことに取り組んでいきますか。

芳賀 まずは、整備したZOOSTの組織体制を実際に機能させること。そして、2社共に新たな事業やサービスを創造していくことです。目の前のキャッシュを生み出す基盤事業があると、現場はどうしてもそこに集中してしまいがちですが、先ほど髙平さんも仰ったように、成長のためには新たなチャレンジをしてウィングを広げていかないといけません。

様々な軸でアイデアが出ていますが、優先的に取り組みたいのは自社のアセットを活かした新サービスの提供。HR領域で言えば、求職者に適した転職エージェントを診断するシステムを自社で持っているので、例えばそれを他のメディアに提供するなど活用の余地がまだあると思っています。

ー会社の成長を通じてどんな社会を実現していきたいか、長期的なビジョンをお聞かせください。

芳賀 日本の会社は99%以上が中小企業。IT業界にも素晴らしい中小企業がたくさん存在します。でも、海外で勝負している日本発のIT企業はまだまだ少ないですし、世間でも何となく「入社するならGAFAのほうがカッコいい」みたいなイメージが残念ながらある。私はそこにずっと後ろめたさを感じてきました。

「技術は優れているが営業がうまくいかない」など、成長要素となるパーツが揃っていない会社は多いと思います。ですので、ユナイト・ホールディングスがその集合体のような存在になって最終的にグローバル市場に挑むことができたら、すごく価値があるのではないかと思うんです。1社1社が自分たちの強みを活かし、尖りながら、集合体として成長していく。今まさにUPPGOとZOOSTで実践していることを、将来的にはより大きなスケールで実現していけたらと考えています。

ー最後に、今後ユナイト・ホールディングスにジョインされる未来のメンバーに向けてメッセージをお願いします。

芳賀 「自分がどの産業に属するか」という観点は、キャリア形成においてとても重要です。当社は、将来性のあるIT業界の中でも成長産業寄りの領域。さらに、これからITを学びたいという方も受け入れられる環境があります。もし今、違う業界にいて燻っている方がいたら、ぜひチャレンジしてもらいたいですね。

合田 当社はまさにこれから成長に向けて、採用や組織を強化していくフェーズにいます。私たちも全力で伴走させていただきますので、会社と共に自己成長していきたい方のジョインをお待ちしています。

髙平 様々な規模や業種のお客様のマーケティング支援を通じて、多くのことを学べる環境だと思います。社員の皆さんのバックボーンも多様ですし、新しいチャレンジを歓迎してくれる社風でもありますので、日々刺激を受けながら成長したい方はぜひ一緒に働きましょう。

<採用に関しては以下をご参照ください>

UPPGOの採用情報

ZOOSTの採用情報