「イベント開催の手間をなくし、成果を最大化する」——そんな理想を掲げ、オンラインからオフラインまで多様なイベントを支えるSaaSプロダクトを展開するEventHub。創業直後から事業の転機となるコロナ禍を経て、同社は大きな変化の波を乗り越えてきた。そのサービスをリリース当初から活用し、その価値をともに磨きながら支援してきたのが、営業支援専門チームを持つジャフコだった。株式会社EventHub 代表取締役CEO・山本理恵さん、カスタマーサクセスを担当するマーケティング/PRマネジャーの鈴木優一さんと、当社ビジネスディベロップメント部の山本惇志による対話から、そのリアルをひもとく。
【プロフィール】
株式会社EventHub代表取締役CEO 山本 理恵(やまもと・りえ)
米国ロードアイランド州ブラウン大学経済学部・国際関係学部卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニー サンフランシスコ支社に入社し、金融・医療・パブリックセクターのプロジェクトに従事。在籍中に認定特定非営利活動法人Teach For Japanへ出向する。 2016年に株式会社EventHubを設立。
株式会社EventHubマーケティング/PRマネージャー 鈴木 優一(すずき・ゆういち)
2010年上智大学大学院卒業。新卒でITベンチャー企業に就職。その後エン・ジャパンのwebサービス企画部門への転職を経て、カオナビに社員番号5番で1人目のマーケターとしてJoin、BtoBマーケティング組織の立ち上げに携わる。FinTechスタートアップのOLTAを経て、2022年5月にマーケティングマネージャーとしてEventHubに参画。
ジャフコ グループ株式会社 山本 惇志(やまもと・あつし)
信州大学経済学部を卒業後、2014年4月に当社入社。九州支社(現西日本支社)にて約5年間、九州地域のスタートアップ企業への投資業務に従事。その後、本社のベンチャー投資部門を経て、2020年よりビジネスディベロップメント部のセールス&マーケティング支援チームに所属。現在は、スタートアップの成長支援および、大企業との協業推進を担当。セミナーやウェビナー等を通じたリード創出にも注力し、投資先の事業機会拡大に向けた支援を行っている。
創業初期から「変わらず連絡をくれたVC」
――まず、ジャフコとのご縁の始まりについて教えてください。
山本社長:私たちがご出資いただいたのは2022年11月ですが、初めてコンタクトをいただいたのはさらに4年ほど前、創業して間もない頃だったと記憶しています。
ジャフコさんの投資担当の方から「ぜひ一度お話を聞かせてほしい」とご連絡をいただきました。当時は私たちもまだ数名規模のチームで、製品もローンチ前。調達を本格的に検討していたわけではなく、どちらかというと「こういうプロダクトを考えているんです」といった情報共有の意味合いが強かったのですが、そこからコンスタントにご連絡をいただくようになって。年に何度か、「その後どうですか?」「こんな情報ありますよ」と継続的に声をかけていただいたことが印象に残っています。
2019年にオフラインイベント向けのマーケティングツールとして第1号のサービスを正式リリースしたのですが、わずか数カ月後にコロナ禍が直撃しました。展示会やセミナーなど、リアルのイベントが一斉に中止になり、当初描いていた戦略は大きく方向転換を迫られました。ただ、そうした状況のなかで私たちは素早くオンラインイベントに特化した方向への転換を決断しました。
結果的に、このピボットが当たり、オンラインイベントを主軸にしたサービスが一気に需要を得ることになったのですが、波が急に来たぶん、落ち着くのも早くて。2020〜2021年には多くのVCから出資のお声がけをいただいたものの、2022年に入ってオンラインイベントの熱が引き始めると、あれだけ連絡をくれていたところが急に静かになった。そんななかでも、ジャフコさんは変わらずコンタクトを続けてくれたんですよね。
単に「今、伸びているから」ではなく、「この領域には本質的な可能性がある」と長期的な視点で信じてくださっているのが伝わってきて、結果的に「資金調達するならジャフコさんにお願いしたい」という気持ちが自然と育っていったんです。ご出資いただいたのは、そんな流れの集大成だったと思います。

「切実な課題」から生まれたユーザー視点の支援
――ジャフコの山本さんは、営業支援の専門部署「ビジネスディベロップメント部」に所属されています。イベントハブとの接点が生まれた背景には、コロナ禍の事業環境の変化もあったとか。
ジャフコ山本:そうなんです。私は投資先と事業会社をつなぐ役割を担当しており、具体的には、投資先のサービスやプロダクトの魅力を整理して事業会社に紹介する営業的な動きや、双方のニーズを拾いながらアライアンス文脈でおつなぎする支援などを行っています。
当時は対面で訪問するアポイントメントや商談のフォローなどをメインで行っていました。しかしながら、コロナの影響でオフラインのビジネスコミュニケーションができなくなってしまった。代替手段として何があるかを考えたときに、「ウェビナーの開催」という選択肢が浮上してきたんです。
とはいえ、2020年の春ごろはまだ社内にノウハウもなく、手探りの状態でした。ウェビナーを月に4〜5本開催する体制をつくったものの、配信はZoom、告知の画像制作はcanva、参加者管理はやアンケートはGoogleフォームなど、複数のツールを組み合わせて回していたので、運営はかなり煩雑かつ属人的でした。実際、1イベントにかかる事前準備や当日対応、終了後のフォローに膨大な工数がかかっていて、「なんとか効率化できないか」と常に感じていました。
そんなときに、イベントハブさんとコンタクトを取っていた投資担当者から「便利なサービスがあるから、ちょっと使ってみたら?」と紹介されて。使ってみたら、“痒いところまで手が届く本当に便利なツール“で、LPの作成、申し込み受付、アンケート、配信、レポートの自動集約まで、全部一気通貫で対応できたんです。「めちゃめちゃいい!」とひたすら感動しました。

――「痒いところまで手が届く本当に便利なツール」というほどの感動を、具体的にどんな点に感じたのでしょうか?
ジャフコ山本:細かいことですが、たとえばLPで日付を入力するとき、これまでは手で直接数字を入力していたんですが、時折間違ってしまうんですよね。参加者からご指摘を受けたり、謝罪メールを送付する必要が生じるなど、意外と神経を使う部分だったのですが、EventHubは管理画面でカレンダーから日付をクリックして入力すれば、自動的にLPにも表示されますし、申込者への各種ご案内のメール等にも反映させることができるので、ミスが激減しました。そういう“ちょっとした便利さ”の積み重ねが、運営者の心理的負担を大きく減らしてくれるんです。ユーザー目線で丁寧につくられたサービスであることは、すぐに実感できました。
山本社長:私たちにとっても、ウェビナー支援の機能は開発途上だったので、リアルな運用現場の声は非常に貴重でした。山本さんのフィードバックはいつも具体的で、たとえば「ここの表示が1クリック多いから手間に感じる」とか、「こういう機能があれば本当に助かるのですが……」といった切実かつ本音の要望がすぐに改善につながりました。
鈴木:特に記憶に残っているのが、ジャフコさんがオフラインイベントで当社を活用いただいた際の、「参加証の一括ダウンロード機能」ですね。ジャフコさんでは、参加者にお渡しする名札にあたる参加証を、事前に社内で印刷して準備されていたのですが、従来は管理画面から1件ずつしか印刷できず、参加証を開いては印刷ボタンを押し、また次の参加証を開いて印刷ボタンを押す……という作業を、ジャフコの皆さんが手分けして数百人分行っていたそうで……それを聞いてすぐに一括ダウンロード機能を開発しました。結果として、それ以降のイベントでの運営工数が大幅に減ったと聞いています。

ジャフコ山本:あれは本当に助かりましたね。おかげで、より生産的な業務に時間をかけられるようになりました。
成果を言語化し、可視化して伝播させる
――ヘビーユーザーならではの視点から信頼関係が構築されていったのですね。
ジャフコ山本:私は本当にこのサービスが好きで、アップデート情報も随時チェックしています(笑)。だから、誰かに紹介するときも心から勧められる。単に「いい」という曖昧な表現ではなく、できるだけ具体的にどんな成果をもたらすサービスなのか、数字でも説明できるように自分なりに整理して説明しています。
鈴木:大企業のマーケティング担当者との商談にご同席いただいたり、メールや電話でのフォローをしていただいたり、営業活動の連携も密に取らせていただいています。
山本社長:2023年秋には、私たちが主催した事例紹介ウェビナーに山本さんにご登壇いただきました。実際にどれだけ工数が減ったか、イベント数がどれだけ増えたかを数値とグラフでわかりやすく提示してくださって、参加者の皆様からもポジティブな反響がありました。ビフォーアフターの成果が分かりやすく説得力のあるプレゼンをしていただけたので、その後も営業資料として活用させていただいているんですよ。

※実際にセミナーで投影をした資料(ジャフコ山本作)
ジャフコ山本:お役に立ててうれしいです。
安心して事業に集中できる関係性が心地いい
――そのほか、ファイナンス以外の支援として印象深いものはありますか?
山本社長:いくつかありますが、たとえば人事制度設計や組織開発に関する「CxOコーチング」のメニューです。ジャフコさんには組織経営の知見が豊富な坪井一樹さんという方がいらっしゃって、私も月に1回、継続的に1on1のセッションを受けています。すでに25回を超えましたが、社内では相談しづらい内容も含めて率直に話ができており、精神的にも大きな支えになっています。
ジャフコ山本:当社には営業支援・HR支援・バックオフィス支援に特化したビジネスディベロップメントチームがあり、専門部署として支援できる体制を整えています。当社の場合、総メンバー126名のうち15名※割いているのでかなり力を入れていると言っていいと思います。支援に特化した専門部署を置かないVCも多いなか、ファイナンスだけでなく、現場の実務にまで踏み込めるのは、私たちの強みです。
※2025年10月1日時点 日本国内のみ

――ここまでのお話で両社の信頼関係がとても伝わってきますが、あらためて山本社長はジャフコとの関係性をどう感じていますか?
山本社長:率直に表現するなら「安心して事業に集中できる関係性」をずっと維持していただいていると感じています。経営者仲間と話していると、投資家と接する際に過剰なプレッシャーを感じてしまうことが少なくないという話も聞くのですが、ジャフコさんとの関係性は本当に快適です。何かを強制されたことは一度もありませんし、こちらの想いを丁寧に受け止めたうえでアドバイスをくださる。その上で、必要に応じてきちんと問いを投げかけてくれる。分からないことは「分からない」と、真摯に指摘してくださる存在は貴重です。そういう信頼のやりとりが、日々の安心感につながっています。
また、良いときも悪いときも変わらず向き合ってくれる姿勢にも、深く信頼を置いています。先ほども述べたように、オンライン需要が最も高まった時期には、いろんなファンドから声をかけていただきましたが、私たちは「一時的なバブル」と捉えてあえてそのタイミングでは資金調達をしませんでした。その後、数字が落ち着いてから、あらためて出資してくださったのがジャフコさんでした。中長期的な視点で、「事業の本質的な価値」を見極めてくださるので、私たちも自信をもってチャレンジできます。
ジャフコ山本:そのように感じてくださっているのなら、とてもうれしいです。私たちは常に「起業家へのリスペクト」を最重要の姿勢として大事にしています。形だけの言葉にとどまらず、実際の行動に落とし込まれていないと意味がないという共通認識のもと、一人ひとりがこの言葉に毎日向き合っているという自負があります。経営者の話をきちんと聞く、意見するなら調べ尽くして筋の通った説明をする、敬意を忘れない——そんな当たり前のことを徹底しているつもりです。
山本社長:だからこそ、私たちも迷わず「一緒にやっていきたい」と感じます。

――最後に、今後の展望をお願いします。
山本社長:サービスを正式にスタートしてから6年が経ち、ようやくイベントに関して「できないことがない」と言えるほどの機能がそろいました。オンラインもオフラインも含め、イベントという形の多様化にも対応できるようになってきたと感じています。
一方で、イベントというのは、企画から準備、当日の運営、フォローアップまで非常に多くの手間がかかるものです。その運営負荷を最大限取り除くことで、企業が本来やるべき、顧客との対話や価値提供に集中できるような仕組みをつくりたい。そして、それが産業全体の生産性向上にもつながると信じています。
イベントは、単なる集客の場ではなく、「思いを共有する人が集い、何かが生まれる」場所です。そのインパクトを最大化できるような仕組みや支援を通じて、日本のビジネスがより多くの人に届き、世界に羽ばたくサポートができたらと思っています。
ジャフコさんには、これからも変わらぬスタンスで伴走していただけると嬉しいですし、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
ジャフコ山本:こちらこそ、これからも応援させてください!

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